(注)
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INDEX
1.はじめに
2001年7月でCANTUS ANIMAEは結成3周年を迎えました。
合唱団の歴史としてはまだ始まったばかりといったところですが、その間に自主公演3回、コンクール全国大会出場2回、レコーディング2回など、かなり充実した活動をしてきたと思います。結成当初、私が合唱団の指針とするべく書いた「CANTUS ANIMAEはどこへ行く」で活動の中心と据えた2イヤーズプラン(2年間にルネサンス・バロック、近現代、邦人の3プログラムによる演奏会を行なう)も、来年2月の4回目の自主公演をもって終了し、ひとまずの区切りがつきます。
結成3周年の今が、CANTUS ANIMAEは次にどこへ向かうのかを改めて考えるべき時期と捉え、改訂版作成に踏み切ったわけです。
それでは、前回同様、論点を絞って、私の考えを述べていきたいと思います。
2.合唱団としてのありかたについて
アマチュアの合唱団にとっては、まずこれが最も重要です。そして、これが合唱団の個性でもあります。
(1)
この合唱団は、私と一緒に音楽をしたいという人たちによって結成されました。これは音楽集団としてはかなり珍しいことです。例えば、プロのオーケストラでもそうした動機で結成されたのは、トスカニーニのためのNBC交響楽団くらいでしょうか。ですから当然、まず私にとって極めて重要かつ特別な意味を持つ合唱団であることは言を俟ちません。
(2)
(1)の動機で結成された合唱団ですから、合唱団のあり方については私の意向が強く反映される形を取っていますが、だからといって、私は好き勝手にやるつもりはありません。私の元へ集まってくれた人たちが音楽的充実感をいかにしたら得ることができるのか、いつもそれを第一に考えています。ですから、重要なことは、練習後のひとときに(当然酒付きで)皆でワイワイガヤガヤやりながら、何となく勢いで決まっていく……そうした形を取っているのです。「何かいい加減だな」と思われる方もいるかもしれませんが、音楽とはそもそもフレキシブルなものです。多数決できっちり決めればよいというものではない……これがこの合唱団の考え方です。
(3)
(2)のような状況ですから当然団員の入れ替わりも激しいのですが、これは、安定のための過渡期であると考えています。当初、この合唱団は月1回の練習でスタートしました。それが2回となり、現在は毎週です。練習の条件が変わり、条件に合わないメンバーは去っていきました。また、練習回数が増え人員が減ることによって団費が急騰し、経済的な理由でも何人かが去っていきました。さらに、結成時、TVECのルネサンス・バロック部門に参加する合唱団としてスタートしたため、邦人作品を手掛けるにあたって方向性の問題でまた多くの人が去っていきました。しかしこうした変動は、CANTUS ANIMAEにとって、将来的にプラスにこそなれマイナスになることではありません。合唱団にとってのモチベーションが高まることによって、現在そしてこれから入団してくる人たちは、こういった高いモチベーションに共感して入団されるわけですから、合唱団としての個性がより強化され、団員同士の結束力が高まることにつながっていくのです。実際、創団当時に比べて、声やアンサンブル感覚に統一感が出てきました。現在は人数もピーク時より10名程度減っていますが、今後はCANTUS ANIMAEが目指すものをどんどん外へアピールすることで、私たちの想いに共感してくれる人が必ず出てくれると信じています。いや信じましょう。
3.音楽的方向性について
2の合唱団としてのあり方を踏まえた上での音楽的方向性であることは言うまでもありません。
(1)
音楽ならば何でもあり。そもそも、音楽をジャンル分けすること自体がナンセンスで、人の心に響き、多くの人々の共感を得る音楽がすなわち「いい音楽」、そうした「いい音楽」には貪欲に取り組みたいと考えています。(合唱という形態上、多くの制約があるのは仕方ありませんが……。)ただ、私が避けたいのは「これは、いい曲だけど難しいからやりたくない。」ということ。この考え方だけは私は容認できません。いい曲だと感じるならばやれる努力をすればいいのです。
(2)
しかし、そうは言うものの、やはり音楽的指標になるものは持っている必要があります。一つは、合唱音楽の原点であるルネサンス以前の作品、もう一つは、現代の音楽(Contemporary Music)です。とりわけ邦人の作品は重要です。現在、合唱のみならず音楽界全体がContemporaryに対しとても閉鎖的です。大衆はContemporaryに目を向けません。例えばロマン派のヴァグナーやショパンも、その時代においてはContemporaryであり、それを大衆が受け入れることで文化として定着していったのですが、現在の状況は全く違っています。このままでは、合唱を含め、音楽界そのものが死んでしまいます。こうした状況の一端を切り拓くためにも、とりわけ邦人のContemporaryを演奏していくことはとても重要なことなのです。Contemporaryが大衆に受け入れられるためには、「いい作品」が「いい演奏」されなければなりません。後に次期・中期プランでも述べますが、CANTUS ANIMAEではこうしたことも重要な柱として今後取り組んでいきます。
(3)
またContemporaryな作品を演奏するために、幅広い先人の作品に取り組む必要があります。そのためにも、2nd、3rd、4thのようなプログラムの自主公演を今後も企画していきたいと考えています。
4.技術面の向上について
前記の方向に向かって活動を進めていくにあたっては、技術面の向上が不可欠です。想いがあっても、それを音として表現できなければ聴き手には伝わりません。以下の点をポイントに技術面の向上を図りましょう。
(1)声
基本的には声作りは、個人個人の自覚と日々の精進に尽きます。しかし、メソッドを統一しなければまとまりのある響きは得られませんので、CANTUS ANIMAEでは、ヴォイス・トレーナーの第一人者である大志万明子先生を専属トレーナーとしてお迎えして月一回のご指導をいただいています。また、当然それだけでは不充分ですので、団員の井口君にアシスタントをお願いし、毎回の練習の中で大志万先生からいただいた課題の克服に努めています。その前提として、各自が毎日5分間のトレーニングを必ず行なうことを忘れないで下さい。一週間に一回30分のヴォイトレをしても、それだけでは技術的な向上は望めません。
(2)耳
純正な音を聞き分ける耳を作るため、今後もルネサンスポリフォニーをテキストにして音律についての研究を継続的に行なっていきます。今年、コンクールの課題曲にパレストリーナを選んだ理由の一つはここにあります。現在、毎回の練習でCANTUS ANIMAEオリジナルの音律メソッドを確立すべく、緻密な音作りを行なっています。将来的には、これを団員一人一人が理論も含めて完全に理解し、新しい曲に向かうときに自在に応用を効かせられるレベルまで高めたいと思っています。
(3)アンサンブル感覚
アンサンブル感覚を養うためには、少人数のアンサンブルの経験を積むしか方法がありません。この課題に向かうため、今年11月、CANTUS ANIMAE結成後初めての合宿を行ないます。この合宿に於いては、団内に4つ程度のアンサンブルを作り、一泊二日の間に練習し、最後にミニコンサートを行なう、という内容を企画しています。どうぞ、お楽しみに。
5.次期・中期プランについて
一つは、海外へ向けて日本の合唱作品(音楽)を発信していく役割を担うこと。もう一つは、新しい作品を世の中へ送り出していく(または、既に生まれた日本の名曲を再度世の中へ送り出していく)こと。この二つがCANTUS ANIMAEが今後取り組んでいくべき大きな柱であると考えています。
(1)海外へ向けて
コンクール、フェスティバル、自主公演という様々な形が考えられます。皆で何が一番よい方法か考えていきましょう。
(2)新作委嘱について
初演の2年前くらいには計画を立てる必要があります。どなたに、どんな作品を書いていただくか、これも皆で考えていきましょう。
(1)(2)とも時間とお金がかかることなので、全員が参加できることを前提にじっくりと、ただし前向きに考えていきましょう。
以上、この改訂版は従来のものと大筋では何も変わっていません。ただ、この3年間、想いを実現していくためにたくさん苦しんだことは事実ですし、また現在もその苦しみの中にあると思います。そこで私も含め、全員が新たなエネルギーを得るために、この改訂版を書きました。どうぞ、その意図を汲み取って下さい。
音楽監督 雨森文也